アイドルの”好き”は営業なのか――その言葉に向き合って考えたこと

こんなツイートを見かけました。

アイドルの”好き”は営業なの――。

1000件近いRTで拡散され、おそらく、これからさらに伸びると思います。

ただのネタツイートです。笑って流せばいい。でも、笑って流せない、大きな引っかかりを感じました。

確かに、「好き」を本気にして、暴走する人がいないとも限りません。このツイートも、「アイドルが好きと言ってくれたんだ!」と暴走するシンジくんをミサトさんが戒める構図です。そんな暴走する人たちへの抑止として見れば、正当な意見だと思います。

ただ、どうにもこのツイートには、アイドルやそのファンに対する「悪意」が含まれているように感じたのです。それが引っかかりの正体。

はじめに謝罪しておきます。マジレス失礼。

アイドルの「好き」

まず、アイドルの「好き」は営業なのか。大意では間違いないと思います。「好き」の言葉で相手の心をつかみ、ファンになってもらう。ファンならば、さらなる深みにはめる。営業のキラートークです。

アイドルだって必死です。ファンがいなければ、活動自体もままならない。なんとかファンを増やすための方法として、「好き」を使うこともあるでしょう。

でも、先のツイートが引っかかるのは、そんなビジネスライクな意味で拡散されていないからです。「営業だから本当じゃないよね。嘘の言葉だよね。アイドルが本気で好きとか言うわけないじゃん。なに真に受けてるのwww」という、アイドルやアイドルファンに対する悪意・偏見を感じてしまったのです。うがった見方ですみません。

でも、アイドルは、営業目的のためだけに「好き」と言っているのでしょうか。そして、それを真に受けることは間違っているのでしょうか。

わたしは、本気だと思っています。本気でファンに「好き」と伝えていると思います。ファン獲得の思惑があったとしても、「好き」の気持ちはきっと本物です。だから、それを真に受けることも、なにも間違っていないはずです。

「好き」の先にあるもの

「好き」にも、いろいろな「好き」があります。家族への好き、上司への好き、ペットへの好き、ゲームへの好き、場所への好き、時間への好き……。同じ「好き」でもさまざまな意味があり、その先にあるのが、「恋愛」だけとは限りません。

ファンも同じです。ファンへの好き。これは存在し得るものです。ファンあってのアイドル。それを誰よりもわかっているのはアイドル本人です。だから、感謝の気持ちを「好き」という言葉に乗せて伝える。そこに偽りはないと思います。そして、そのゴールは恋愛ではありません。もし、「好き」の先に恋愛があれば、アイドルはファン全員と付き合わないといけなくなります。

そもそも営業だって、本気さがなければ、売れるものも売れません。本気だからこそ伝わります。つまり、アイドルの「好き」が営業だとしたら、それだけ本気ということ。「営業」は決してマイナスな意味だけではないのです。

ファンとして好きでいてくれる。「好き」と言ってくれる。そんな嬉しい言葉を真に受けず、「どうせ営業でしょ」と冷めた感じで流すなんて、そんな悲しいことを「推し」にできますか。

でも、「ファンとして好き」では物足りず、「恋愛の好き」を求めたら、話は違ってきます。

アイドルの「好き」は、ファンに対しての好きで、異性としての好きではありません。ましてや、多くのファンがいる場合、多くのファンに同じように言っているでしょう。それが普通です。裏切りなどでは決してありません。ファンは自分ひとりではないのですから。ドルヲタをする以上、そこは必ず含んでおく必要があります。

逆に、アイドル側が、アイドルとファンの一線を越える場合もあります。ただ今回は、ファン側の話に終始させてください。

お互いに特別な存在

「推し」は特別な存在です。でも「推し」にとって自分は特別じゃない……。そんなことはありません。特別です。ファンは特別な存在です。これだけアイドルがあふれた世界で見つけてくれた、応援してくれた、好きと言ってくれた。そんな存在をないがしろにするアイドルはいないと思います。いないはずです。ないがしろにされるとしたら、明らかな厄介でしょう。

だから、「推し」にとってファンでいてくれるあなたは、特別な存在。

でも、絶対に間違えてはいけないのは、「特別な存在のひとり」であること。

自分だけの存在と考えてはいけないし、自分だけの存在にしてもいけない。アイドルは光。求めるものすべてに降り注ぐ光です。その光をだれかが独占してしまったら、誰の目にも届くことなく、光は消えてしまいます。本人はまだ輝こうとしているにも関わらずです。

そんな悲しい思いを、「推し」にさせていいはずがないです。

どうしてもアイドルとファンの関係は、悪い目で見られがちです。言葉を選ばずに言えば、「気持ち悪い」と思う方もいるでしょう。

アイドルのなかにも、なんとしてでもファンを獲得するために、嘘の気持ちで、「あなたのことが好きだよ」いうアイドルもいると思います。それを真に受けて、「俺も好きだ!」と言うのは、傍から見ると滑稽かもしれません。

いいじゃないですか、それでも。「好き」と「好き」で繋がれる関係。間違ってなどいません。とても素敵な関係です。

だから、傍からどう思われるかではなく、好きなアイドルの言葉を信じてください。どうせ営業でしょ。そんなことを言わずに。「好き」の言葉をファンが信じなかったら、誰が信じてあげられるのか。誰よりも信じてほしい人に届かないのは、なにより悲しいことです。

「好き」で舞い上がり、「好き」を返せる世界を、どうか大事にしてください。

ただし、一線を越えないように……。

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