make mie(メイクミー)の半年とパラレルサイダーと声出しヲタクと――

2023年8月29日、ヒロインズフェスVol.8にてmake mie(メイクミー)はデビューしました。

まったくの新規グループというわけではなく、2023年8月7日に現体制を終了したパラレルサイダーが改名したグループです。パラレルサイダーのメンバーだった小熊まな香さんと夢月まゆさん、新たに加入した小坂みおんさん、早月女みゅうさん、鈴明みらい(現:雛小みらい)さんの5人で活動をはじめました。

パラレルサイダーの思い出や出会いについては、ぜひこちらの記事をご覧ください。

パラサイを好きになってから現体制終了までわずか2ヶ月。悔しさしかありませんでした。こんなすばらしいグループになんでもっと早くに気づかなかったんだろうと。もっと見たかった、もっと応援したかった、でももう応援することはできません。

そう思っていた矢先です、メイクミーのデビューが発表されました。現体制終了からメイクミーのデビューまで1ヶ月も開いていません。このスピードに複雑な感情を抱いた方も多いはずです。わたしも正直、だったらパラレルサイダーを続けてもよかったのではないかと思いました。現体制終了ライブからメンバーの不完全燃焼も伝わってきたので余計にです。

ただ、またパラレルサイダーの曲が聞ける、応援ができる。あのとき消化不良だった気持ちに決着がつけられる。その嬉しさのほうが何倍も大きかったです。

そして、メイクミーと一緒に駆け抜けた半年がはじまりました。

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ヲタク人生を変えたふたつの出会い

わたしがはじめてメイクミーを見たのは、デビューの翌日、GOTANDA G4で開催された対バンです。前日CLUB CITTA’という大きな会場でたくさんのヒロインズファンに見守られたデビューしたメイクミーですが、この日のお客さんの少なさ、覚えているでしょうか。小さな会場なのにガラガラでした。

当時のわたしはまだ声出し初心者で、ろくにMIXも打てないようなヲタクでした。しかもメイクミーを見るのははじめて。隅でこそこそ見ようと思っていたら、あまりに人が少なく、気づけば一般エリアのド真ん中でペンライトを振ることに。

今だったら「よっしゃ!望むところだ!」と全開で声を出しますが、当時は「自分がここに立ってもいいのか」とビビりながら見ていました。

その状況で見たメイクミー。パラレルサイダーとはまったく違う雰囲気なのにパラレルサイダーの曲を歌う。その状況に頭がついていきません。ただ、もう聞けないと思っていたパラサイの曲がライブで聞ける。それが嬉しくて、必死でペンライトを振ったことを覚えています。

それがメイクミーとの出会い。そしてこの日のライブ、わたしはもうひとつ、わたし自身のヲタク人生を変える出会いを果たしました。

とあるグループの出番。あいかわらずフロアはがらがらです。そこにひとりのおじさんが現れ、真ん中にどんと構えました。そのおじさんはたったひとりでMIXを打ち、コールし、フリコピまでこなしました。その姿が本当にかっこよくて、同時に、自分はなにをやってるんだという気持ちになりました。

自分だってメイクミーの出番のときに同じ真ん中にいたはずです。なのになにもできなかった。ただゆらゆらとペンライトを振るだけ。声を出せればもっと盛り上げられたはず。

必死で声を出すおじさんの後ろ姿を見て、自分もこうなりたいと強く思いました。いまもこのときのおじさんが自分のめざすヲタク像です。

憧れのヲタク像は定まりました。となると実践したくなります。すぐにメイクミーの次のライブを調べました。翌々日にあります。迷わずチケットを購入しました。

でも今まで声出しに関して、誰か出してよと他力本願だったヲタクです。なかなかMIXを覚えられないし大きな声も出せない。タイミングが合わない失敗は数えきれないぐらいしました。ガチ恋の途中で言葉が出てこなくなることもありました。ライブの前はいつも緊張でぶるぶる震えていました。

それでもやり続けました。やり続けられたのはひとえにメイクミーのライブが楽しかったからです。声出しの練習をしながら、どんどんメイクミーにハマっている自分を感じていました。

メイクミーは見た目のふわふわ感とは違い、マグマのように熱い気持ちを秘めたグループです。わたし自身も熱い(暑苦しくもある)性格なので波長が合いました。ステージの熱を受けフロアから声という熱で返す。そのキャッチボールを繰り返すなか、メンバーのパフォーマンス同様、自分自身もどんどん成長できました。

人の少ない会場でも、それこそひとりでも声を出して盛り上げられる。その自信もついてきました。いま自分はメイクミーの役にたてている。そんな気持ちも芽生えてきました。

しかしそれがただのエゴ、思い上がりだったことを思い知らされる日がやってきます。

それは夢月まゆさんの生誕祭。

この日、声出しヲタクとしての転機に立たされました。

声出しヲタクの慢心と絶望

2023年11月2日に開催された夢月まゆ生誕祭。わたしの鼻息はめちゃくちゃ荒かったです。デビュー以降、メイクミーのライブは行けるだけ行きました。そこで誰よりも声を出してきた自負があります。だからまゆさんの生誕では自分が一番盛り上げる!そんな気持ちで腕をぐるんぐるんと回していたし、まゆさんにも「盛り上げます!」なんて大きなことを言っていました。

生誕Tシャツを着て気合十分。いざ生誕祭……でしたが、結果から言えば惨敗。途中で心が折れてMIXもコールもできなくなったほどです。

対バンでは必死で声を出していると、他グループのヲタクさんが乗ってくれたりします。でも単独はまた違う。もちろん声を出すから偉いとか、そんなことを言うつもりはありません。応援の仕方はそれぞれです。

それがわかっていたはずなのに、コールをしているうちどうしようもない孤独感に苛まれました。この現場ではコール、つまり自分は求められていない。むしろジャマなのではと思ってしまいました。

大好きな人の生誕祭なのにそんな余計なことを考えているのが嫌だったし、なにより「盛り上げる!」とか息巻いていた自分が恥ずかしくなってその日の夜は本気で泣いてしまいました。仲の良い声出しヲタクさんに「心折れました……」と泣き言のDMを送ったほどです。

それからしばらくの間、声を出すのが怖くなりました。「求められてない」。その疑念が頭をぐるぐると回ってしまいます。

パラサイの頃からコールが少ない。だから自分ががんばる!そう思っていましたが、そもそもコールは必要ないとファンの方が認識しているから少ないのではないか。そこに自分のような新規がはしゃいで、調子に乗って、がんがんコールするのはメンバーにとっても迷惑なのではないか。もしかして自分のやってきたことは全部迷惑だった……そう思うと怖くてとても声なんて出せません。

その1週間後、「てんはなVSめいくみ」というライブがありました。絶対に気合を入れなくちゃいけないライブです。でもまだ腑抜けていた自分は楽しみ半分、怖さ半分で会場に行きました。さすがVSイベントだけあって声が飛び交う熱いライブでしたが、それでもメイクミーのコールは相手グループと比べて小さい。ただそこに張り合う気力はありませんでした。

調子に乗って「わたしが引っ張る!」と吹いていた頃の自分はいません。勝手に背負って、勝手に崩れて、勝手に挫折しました。X(twitter)で悩みをぽろっと書いたりもしました。それにメンバーから「いいね」がきてさらに惨めになりました。メンバーは関係ない、自分がひとりで落ちただけなのに、なにを余計な心配させているのかと。

次の日もライブがありましたが、あまり乗り気ではありませんでした。自信は粉々に砕かれているし、声を出すことに恐怖心すらあります。うるさい、じゃまだ……周りがみんなそう思っているように感じて、会場にいるだけで精神的にまいってきます。

行くのをギリギリまで迷いました。それでも向かったのはなぜか。よく覚えていません。ただ重い足取りで会場に入りました。けどまだ迷いがあります。SEが流れたとき、わたしはフロアの外にいました。ここまではきたけど入る勇気がない。もし煽られたら自分はどうするのか。その煽りに応えて声を出せるのか。

……答えは出ません。出ないままフロアに入り、いつもより後ろでペンライトを振りました。元映画館の会場なので割と広い空間です。声を出しても届けるのが難しい距離。ここなら静かに見れます。

そこで、いつも打っているMIXやコールをせず、もくもくとペンライトを振りました。声出しをしなかった頃に戻ったようです。

これでいいのかもしれない。声を出して辛い思いをするならこのままでいい。そもそも自分の性格で声出しは向いてなかったんだ。だからこれでいいんだ。そう思いながらペンライトを振っていると、『サマーサイダー』のイントロが……

頭を抱えそうになりました。この曲はガチ恋口上の煽りが入る曲です。「言いたいことがあるんだよ」とメンバーが煽る。ここまでの空気を読む限り、その煽りに応える人はだれもいません。そうなると煽りだけが空しく響いてしまう。そんな寂しい想いをメンバーにさせるのか。その想いをさせたくないから声を出しはじめたんじゃないのか。もうひとりの自分に責められます。

でも、もう声を出すのは……

踏ん切りがつきませんでした。迷っている間もどんどんガチ恋の間奏が近づいてきます。声を出すか出さないか。どちらにも踏み切れないまま困っていると、メンバーのひとりと視線がばっちり合いました。その目が、「今日もよろしくね」、そう語っているように見えたのです。

もちろんそんなの思い込みです。都合の良いように解釈しただけ。わかってます。わかってても、その瞬間気持ちが固まりました。全力のガチ恋口上。何度も叫んできたガチ恋ですが、この日は過去最高のガチ恋だったと思います。

そのあとの特典会、わたしの悩みをX(twitter)で知っていたまゆさんが、こう言ってくれました。

それはすべての迷いを断ち切るひと言。

「だいじょうぶ、まゆがいるよ」

メイクミーとパラレルサイダー

2024年2月29日――

メイクミー半年記念ライブ。

わたしは清々しい気持ちでその日を迎えられました。あの頃の悩みも気負いもありません。メンバーが喜んでくれることにただ全力を尽くす。「まゆがいるよ」。その言葉によって一番大事なことに気づかされました。

ひとりだと思っていましたが、ひとりだったことなんて一度もないんです。ステージの上にはいつもメイクミーがいました。いつも見てくれていました。コールを喜んでくれていました。それに周りにも声を出す方たちがたくさんいた。自分ひとりで背負い込む必要なんてどこにもありませんでした。

もうがらがらの会場だって怖くありません。ステージの上のメンバーが笑顔を向けてくれる。それだけでいくらでもがんばれました。行けるライブは全部行って、声が枯れるまで、声が枯れても叫び続けました。そうすることが幸せでしかたありませんでした。

わたしのくだらない悩みを吹き飛ばし、必死で応援する幸せを教えてくれたメイクミー。そのメイクミーが半年を迎える。全力で声を出して盛り上げよう。ひとりじゃなくみんなで一緒に。

当日、わたしはあえて後方にいました。もう孤独じゃありません。声を出す仲間がたくさんいます。その方たちと声を飛ばしながら、メイクミーの半年に想いを馳せました。

この日、メイクミーは初披露の楽曲があります。なんとなく予想はついていました。特典会やカウントダウン動画からの雰囲気で「普通の曲」ではないことが察せられたからです。

セトリが進むにつれ、予想は確信に変わってきました。セトリの最後で披露される。ならばもうあの曲しかない……

そして予想通り、初お披露目楽曲が解禁されます。

『パラレルサイダー』

パラサイ時代の楽曲を多く歌い継いできたメイクミーですが、『パラレルサイダー』は封印したままでした。パラサイでの人気曲です。この曲からパラサイを好きになった方もたくさんいます。自分もそうでした。

メイクミーの人気だけを考えれば、すぐにでも解禁してこの曲目当ての客を増やしても良かったところです。わたしも何人かから、「パラレルサイダーやってないんですか?」と聞かれました。でも封印し続けた。なぜなら、それだけパラサイにとって、そしてパラサイのファンにとって大事な曲だからです。

パラサイを代表する曲であり、そこにはパラサイの思い出やパラサイに関わったすべての人の気持ちが強く込められている。下手すればメイクミーがパラサイの世界観に呑まれかねませんし、メイクミーのアイデンティティが崩壊する危険性すらあります。

この曲を解禁するにあたって、当時のメンバーだったまゆさんやまな香さんの葛藤も、メイクミーになってからのメンバー、みおんさん、みゅうさん、みらいさんも複雑な感情があったはずです。もちろんファンにもそれぞれの感情がある。

だからこそです。だからこそ全力を越えた全力で喜びの感情を表に出しました。もうとっくに声は枯れています。連日のライブ参加で体力も限界です。それでも全力でMIXを打ち、全力で両手を掲げたのは、涙まじりで歌うメンバーの背中を押したかったからです。

パラレルサイダーが大事な曲。それはメンバーだって当然わかってます。わかっているからこそ震えるほどに怖かったはずです。それでもいまこのタイミングで披露したのは、メンバーの強い覚悟があってこそ。

だったらその覚悟を全力で受け止めたかった。だいじょうぶ。メイクミーはだいじょうぶ。メイクミーは自分たちの色を見つけた。借りものじゃない自分たちの色を。この半年、すぐそばでずっと見てきました。嘘みたいな時間でも、逃げたくなるような会場でも、できる限り一緒の時間を共有してどんどん強くなるメイクミーを見てきました。声を出して一緒に戦ってきました。

その自分がいま伝えなくてどうするんだ。

メイクミーはだいじょうぶ!

そう伝えるために必死で声を出しました。だいじょうぶ。メイクミーはもうだいじょうぶ。どんな世界にだって呑まれない。自分たちの力に変えていける。絶対だいじょうぶ。そう全身で伝えるのが、成長させてくれたメイクミーへの恩返しだと思って限界を飛び越えました。

そのときふと思い出すことがありました。それはまゆさんの生誕祭。一夜限りでパラレルサイダーが復活したときです。ものすごい盛り上がりでした。この日一番の盛り上がりでした。自分も盛り上がったひとりです。

でも同時に少し悔しかったんです。メイクミーでも同じぐらい盛り上がりたい。メイクミーだってできるはずだと。

いま――パラレルサイダーを背負う覚悟を決め、『パラレルサイダー』を歌うメイクミーに多くの声が飛んでいる。パラレルサイダーとしてではありません。メイクミーに対してです。

パラレルサイダーがあったからメイクミーが生まれた。メイクミーはパラレルサイダーであり、パラレルサイダーはメイクミーです。そのうえでメイクミーは独自の色を見出していかなくてはいけない。望む望まないに関わらず、過去と向き合っていく必要もあります。

そんな辛い思いをするぐらいなら、いっそのこと新規グループとして始動したほうが楽だったかもしれません。

でも彼女たちは逃げなかった。偉大なパラレルサイダーを背負い、自分たちの力に変える覚悟をした。自分たちの色を見つけだした。決して安易な気持ちでパラサイを受け継いでいないのはこの日のライブを見た方たちなら、いや、メイクミーのライブを見た方ならだれもがわかるはずです。

『パラレルサイダー』のお披露目、そしてメイクミーの半年が終わりました。

ここからの半年。

『パラレルサイダー』を取り込んだメイクミーはますます加速する。

そう感じる半年記念ライブでした。

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なりたい私へ――

”make up for mie” なりたい私へ make up

それがメイクミーのコンセプトです。

メイクミーとの日々を振り返ると、「なりたい私(ヲタク)」を追求する日々でした。メイクミーとはじめて出会った場所で輝いていたおじさん。あの背中に少しは近づけたでしょうか、少しはメンバーに安心感を与えられるヲタクになれたでしょうか。そうなれていたら嬉しいです。

メンバーの皆さんはどうでしょうか。

なりたい私に近づけましたか?

でも、それって難しいですよね。とくにアイドルは「なりたい私」が「ファンの求める姿」と違うことがある。そのはざまで悩むこともたくさんあるはずです。パラレルサイダーを解禁したいま、まさにその悩みの中にいるかもしれません。

そんなときはこの言葉を思い出してください。

あの日、まゆさんに救われた言葉をお返しします。

「だいじょうぶ、みんないますよ」

世界中が敵だとしても、世界中が敵に見えてもだいじょうぶ。ひとりひとりのメンバーに、そしてグループに「みんな」がついています。だから迷っても悩んでも、「なりたい私」に向かって進んでください。その姿こそファンの望む姿ですから。

パラサイと出会えたことも、
メイクミーを応援できることも、
それは当たり前じゃなかった。

それは宝物になっていくんだ――

メイクミーと過ごす日々(宝物)、これからも増やしていきます。

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