特典会に見る残酷な現実――それでもあなたは幸せを手渡す「アイドル」です

これまで、乃木坂46、AKB48、SKE48の握手会に参加したことがあります。

大手グループの握手会は、1枚数秒の世界。本当にあっという間です。でも、幸福は時間に比例しません。そのわずかな時間だとしても、憧れの人と話せる時間は、永遠ともいえる幸福をもたらしてくれます。

しかし、握手会は残酷な現場でもありました。長蛇の列が作られるメンバーもいれば、ほとんど列が作られないメンバーもいる。人気の差が誰の目にも明らかになります。

AKB48の握手会に参加したとき、テレビに多く出演している超選抜メンバーが滑走路(誰も並んでいない状態)だったことに衝撃を受けました。乃木坂46の握手会でも、暇を持て余したメンバーに、パーテーションの隙間から微笑みかけられ、一瞬でフォーリンラブ。

そんなチョロさマックスのわたしは最近、主に地下アイドルの現場に行っています。

そこで見た景色も、やはり残酷なものでした。

「買い増し」の嬉しさと怖さ

ざっくりとわたしが参加した特典会の概要を書くと、

『ツーショット(ソロショットも可能)チェキ券+1分間トーク付き=1枚1,000円』。物販でこのチェキ券を購入し、好きなメンバーの列に並ぶ。

です。現場やグループによって変わると思いますので、あくまで参考程度に。

ここで注目なのが、「物販で購入」です。この嬉しさと怖さ、おわかりいただけるでしょうか。

ライブを見て、気になったメンバーのチェキ券をその場ですぐに購入できる。もっと話したいと思えば、買い増しもできる。これは非常に嬉しいことです。

ただ、特典会には制限時間があるので、一日中同じメンバーにループはできません。とはいえ、複数アイドルが参加するイベントで、次から次へと買い増ししていたら、財布の中身はあっという間にからっぽ。レッツゴーアコムです。これが怖さ。

そしてもうひとつの怖さ。

簡単に買い増しできるからこそ、列の並びが余計に気になります。大手グループは前もって握手券を手に入れる必要があるので、いくら並びたくても、その場で購入して並ぶことはできません(例外あり)。

でも、地下アイドルの現場は違います。すぐ購入できてしまう。なのに並んでもらえない。これは、かなりメンタルがえぐられるのではないでしょうか。いや、この仕組み自体、大手も地下も関係なく、アイドルに相当な負担をかけるものだと思います。

「あなた」のために

では、「そんなイベントすぐに辞めるべきだ!」が結論なのか。違います。今回書きたかったのは、「そんな現場でアイドルは戦っているんだ。尊い!」ということです。握手会なり特典会の是非を問うのが本題ではありません。ただただ、アイドルってすごい。一番すげーのはアイドルなんだよ!と中邑真輔ばりに叫びたいところです(プロレスネタ失礼)。

ライブ後の疲れているところに、ファンが次々ときて、ひとりひとりファンに合わせた会話をする。チェキで疲れ果てた顔は厳禁です。アイドルスマイルで渾身の一枚を撮ってくれる。並びが少なければ、痛いぐらいの現実を突きつけられる。そんな負担をしてまで、なんのために笑顔で立ち続けるのか。

「あなた」のためです。

いや、「お金」のためでしょ。なんて言っちゃダメダメですよ。たとえそうであっても、おいしい料理を作ったシェフに、「お金のためにありがとうございます!」とは言わないじゃないですか。

アイドルもビジネスですし、当然、お金は必要です。ファンが札束に見えているアイドルもいるかもしれません。

でも特典会では、そんな素振りをまるで見せません。きてくれるファン、つまり、「あなた」のことを思って、接してくれます。これは実際に参加してよくわかりました。「本当にきてくれてありがとう」。その言葉は、言葉以上の実感をもって、胸に響きます。

アイドルとファンが心をかわす場所。それが特典会です。

とはいえ、やはり特典会は残酷な現場です。覚悟も必要です。それはアイドルだけでなく、運営も覚悟する必要があります。傷ついたメンバーに対して、「まあ我慢しなよ」では、いつ心が折れるかわかりません。

なかには、「わたしへっちゃら!」というアイドルもいると思いますが、それでもメンタルは徐々に蝕まれていきます。肉体的な疲労はもちろん、精神的なストレスに対するケアは、絶対に必要なことです。アイドルという立場に代わりはいても、そのメンバーに代わりはいません。

そのことは、アイドル本人はもちろん、運営も、ファンも、絶対に忘れてはいけないことだと思います。

幸せを手渡す存在

人気商売である以上、どうしたって人気の差は出てきます。横一線なんてありえません。また、1,000人を相手にするアイドルもいれば、10人しかファンが並ばないアイドルもいる。同じアイドルなのに、なんでこんなにも違うのかと、落ち込むこともあると思います。

でも、ファンを幸せにする。その力は、どんなアイドルであっても変わりません。

CDやチェキは形として残ります。でも、特典会で手に入れるのは、形あるものだけではありません。記憶です。アイドルは幸せな記憶を手渡してくれます。

誰かを幸せにするなんて、そう簡単にできることではありません。けど、わたしたちはアイドルに幸せをもらっている。それは確かな事実です。

あなたがアイドルになってくれてよかった。アイドルにならなかったら、こうして出会えなかった。幸せな気持ちになれなかった。いま、出会えて、幸せな気持ちになれて、本当に良かった――。そう思ってくれるファンがひとりでもいるならば、立派な「アイドル」です。アイドルとしての意味があります。

たとえ過酷な現実に晒されても、アイドルはそこにいて、わたしたちに幸せを振りまいてくれる。そう考えると、また「推し」の存在が尊く思えませんか。ぜひ、精一杯の愛を届けてください。その愛で、「推し」はさらに輝くはずです。

LOVE!LOVE!LOVE!愛を叫ぼう!愛を呼ぼう!(絶妙に古い)

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